合同会社ドローンビリティー CEO 北岡 弘 氏
「空の産業革命」が謳われ、IoT社会におけるエッジデバイスとしても期待されるドローン。
今後、危険地帯で活動する人々を安全かつ効率的に支援し、ビジネスの変革や社会の発展に大きく寄与する可能性を持っています。その開発に求められる知識・スキルの身につけ方、キャリアの築き方について、自動制御プログラム 「ArduPilot」を実践使用した開発のプロフェッショナルであるドローンビリティーの北岡様にお話を伺いました。
近年、ドローンが急速に世界規模で使用されるようになりましたが、その理由をご説明いただけますか?
ドローンが普及した理由は主に以下の2点が挙げられます。
- 昔から使用されているラジコン等と比べると、高性能のセンサー及び機能がフライトコントローラーに実装されており、操縦が容易
- 産業用ヘリコプターと比べると価格が安価であり、機体自体も小さく持ち運びも便利
今、ドローンはどのような用途で使われているのでしょうか?
テレビ番組やCMで見るような空撮から、地震や風水害など災害時の捜索や救助、測量やインフラ点検での計測・3次元データ化、農業では農薬散布や作物の生育管理、また物資運搬、警備などで使われています。
それ以外の分野ではドローンが使用される見込みはないのでしょうか?
いいえ。それ以外の分野においてもドローンの活用検討は進められています。ただ、一般的に販売されているドローンでは様々な分野でそのまま活用させることが難しく、分野に合わせたドローンの開発が必要となります。
ドローンを開発するには、どうすればよいのでしょうか?
- 機体に関するハードウェアの開発(ハードウェア)
- 自動制御プログラム及びアプリに関するソフトウェアの開発(ソフトウェア)
に分けられますが、それぞれ専門知識をもったエンジニアが求められます。
具体的な知識として何が必要なのでしょうか?また、それを学ぶにはどのような方法がありますか?
ドローンは飛行するマルチコプター型や、飛行機型、垂直離着陸機(VTOL)などがありますが、それぞれ航空工学、材料力学、電子工学の知識が必要となり、理工学系の大学で学ぶことが出来ます。 自動制御プログラムや、アプリに関するソフトウェアの開発では、C言語、C++、Python等のプログラム言語の知識と、自動制御プログラムに関する知識が必要となります。プログラミング言語に関しては、専門学校、大学などで学ぶことができますが、自動制御プログラムに関する知識は大学院または、専門性の高い企業などで学ぶ形になります。
自動制御プログラムを自分で学ぶことはできないのでしょうか?
自動制御プログラムはドローンメーカーが独自に開発を行っていることが殆どですが、Webで公開されている自動制御プログラムもあります。“ArduPilot”というものです。
ArduPilot講義風景
ArduPilotは2007年から世界中のエンジニアの有志達が開発を開始した、オープンソースの自動制御プログラムです。現在も活発にプログラムの開発・改良、新機能の追加などが行われており、ドローンの世界シェア約7割を占めると言われるドローンメーカー、DJI社製品にも劣らない多彩な機能を有しています。
また、このプログラムは全てWEBで公開されており、ソースコードを全て確認する事ができ、GPLv3ライセンスの為、自由に改良して使用する事が出来ます。これから自動制御プログラムを勉強していきたいというエンジニアの方々は、ArduPilotを勉強して知識を習得していくと良いと思います。
ドローン業界で求められている人材とは?
Raspberry Pi 3
今、ドローン業界で特に求められているのは、自動制御プログラムを理解し、新たな飛行機能などを追加できる人材です。様々な分野でドローンを活用するには、ドローンに新たなセンサーを取り付け、ドローンと連携させる必要があります。また、遠隔からドローンを制御及び監視を行うために、通信機との連携も必要となります。
Jetson NanoとTX2
また、AIやSLAMなどの特殊な処理を行う場合には、フライトコントローラーとは別に、高処理が行えるコンパニオンコンピューターをドローンに搭載して、処理した結果をフライトコントローラーへ渡す方法が一般的になってきています。その際も、それぞれのプログラム構築が別途必要となります。
これらからのドローンの将来像とは?
2015年当初は“ドローン=無人航空機”と言う意味合いでしたが、現在では“ドローン=無人機“と言う考え方に変わっています。今、無人機は様々な分野での活用検討が進められています。 無人航空機による上空からの広域監視、無人車による遠隔地からの危険場所の状況把握、無人潜水艇による水中内の捜索・確認、無人艇による海上監視などです。
また、無人機ではありませんが、“空飛ぶ車”と呼ばれる、人が載った状態で飛行できる車の開発も、日本及び世界各国で開発が行われています。今までは映画の中でしか見られなかったような世界が、数年後には私たちの日常となる可能性が高まっています。
プロフィール
合同会社ドローンビリティー CEO 北岡 弘
日本文理大学(大分県大分市)航空宇宙工学科 学士取得(2007年~2011年)飛行機設計、航空力学、構造力学などを学ぶ。
システム開発会社(茨城県つくば市)に勤務(2011年~2015年)JAXA 筑波宇宙センター内で人工衛星の軌道監視システムの開発・運用に従事。また、会社の新規事業としてドローンを用いた航空写真計測業務にも従事。
2015年6月 合同会社ドローンビリティー 設立
現在、建設関連企業、GPS測量企業、人材派遣企業ドローン事業のご支援を継続中。また、2017年からTAP-Jに所属し、プロジェクトリーダーとして、ArduPilotを使用した自動遭難者発見システムの構築に従事。
クリーク・アンド・リバー社で現在行われている講座
ドローン自動制御のオープンソース「ArduPilot」 プログラミング実習講座
ハンズオン形式でArduPilotを用いた応用的な機能実装を学べます。
ArduPilotを使用したRoverの構築方法を理解し、今後の無人機開発に役立つ知識を習得するのが本講座のゴールです。開催日時:2020年10月3日(土)10:00~16:00
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